弐/
「あ゛ぁぁぁあ!殺してやる!殺してやるぅぅぅぅッ!」
「落ち着いて下さい!先生麻酔を…ッ」
「あ゛あぁぁ離せェ!離せェ!」
「……ッ!」
発作だ。
止めなきゃ、止めなきゃ。
ああなった比菜を止められるのは。
「比菜!」
「あ゛ぁっぁぁぁ!殺す!殺してやるゥゥ!」
「比菜、聞こえないの?ぼくだよ、比乃だよ!」
呼びかけても応じないのは分かっている。
でも、それでも。
「比菜…ッ?」
「殺してやるゥ!全て!破壊してやるゥゥッ!」
多分自慢できる事じゃないけど、僕は走るのが速い。
あぁやって注意が逸れているときに僕は比菜の懐に入って、お腹の少し上を殴る。
そうすれば比菜は気を失って、いつも発作は治まった。
「ごめん比菜…ッ、痛いの我慢して…!」
彼女の右側に回り込んで、走りだす。
左手を目標に向けて突き出そうとして――…
「え…」
ピタリと耳に音が入ってこなくなった。
殴ろうとした筈の左手は視界に入ってこなくて。
胸元は焼けたような感じがして。
気付いたら目の前に比菜の顔があって。
「死ねェ」
音が聞こえてきた。
誰かが叫んでいるような気がした。
瞼が熱かった。
視界が真っ暗になった。
鈴の音が聞こえた気がした。
「…っ助けて…」
―――チリン
「我は対象の活動の停止を命令する」
誰?
「力を封じ、対象と共に我らを結界内へ」
比菜は?
声がしない。
まさか…。
ねぇ…?
「共に転送、我が名は 」
声が聞こえなくなるのと同時に、周りが明るくなった気がした。
040402.
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壱
参