灰色ソナタ 拾/転章之稿
「おぉっ…町!着いたでー」
「当たり前っす、僕の案内なんすから」
眼下の喧噪が嘘かのように静かな丘の上に佇む人影が二つ。
「んーそうやったな。で、その情報は確かやろうな?」
「それこそ当たり前っすよ。僕を誰だと思ってんすか?」
「はははっ愚問中の愚問やなぁ…」
ざわりざわりと風が草を鳴らした。
片方がもう片方に歩み寄る。
「さて、風でも無いんに耳ざとい高潤サマ?」
「僕はその名は捨てたんすよ?嫌みっすか?」
それでも答えた方は嫌という風では無く、むしろ皮肉だというように。
「えー良いやないか。―――さて、後は手にするだけちゅうことやけど問題は?」
「無い筈っす」
「ほな行くで。お姫様の奪還に」
にやりと笑って、歩き出して。
丘をゆっくりと降りる、一人分の足音。
050102.
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玖
拾壱