ふと聞こえてきたメロディーに手を止める。
音の発生源は――…
幸せ!
「Naァ、それ」
「ん?」
ピタリと止むメロディー。
そちらに目を向け、持っていた雑誌を机に放った。
「猪里チャンてば、それよく歌ってるよNa?」
「…えぇと…何が?」
疑問を口に浮かべ、手に持った包丁はそのままに顔だけコッチを振り返る。
…何が、って…。
「だから、今No」
「あんなー、指してるもんが分からんゆーてんの」
今度は規則正しく続いていた音が止まる。
その反応は無意識に歌っていたというコトでよろしいので?
「だかRaー今歌ってた曲ー。いつも歌ってるデショと言ってるンですけDo?」
「え、俺、歌って…た?」
「えぇもうバッチRi☆」
あぁそうですか、本当に無意識だったとは。
俺は知らない歌なのに、本人も無意識なんだったら聞いた意味無いじゃないですか。
今だってなんかえー、とか、何歌ってたんやろー、とか唸ってるし。
「えー、どんなん歌ってた?」
聞くなよ。
俺だって知らねっつの。
(…そんなトコロも可愛いんだけどNe☆)
「Nー俺の知らない歌っぽかっTa」
「えーと、じゃあ…コレ?」
静かに流れるメロディ。
これは違う。もっと高い曲だった。
それにしても相変わらず猪里は歌が上手いなぁと思う。
確か最初の時も―――
「で、違うんか?合ってるんか?」
「エッ!あ、ソレHa違う」
「これじゃないんやったら…えと、」
また流れ出すメロディー。
聞き慣れたという程聞いてはいないけど、聞けば思い出すような、そんな感じの。
「そう、ソレDa」
「これかぁーそっかぁー。うん、コレなら納得やねぇ」
「何De?」
「これな、覚えてる中で、一番最初に母さんが歌ってくれたやつやけん、多分それで」
「Aーそれなら俺Mo納得」
それは子守歌って奴だ。
子守歌じゃなかったってのもあるけど、何故か耳に残る母親の声を覚えてない奴は居ないんじゃないか?
勿論、言われてすぐ思い出す奴なんか居ないと思ってるけど、言われれば、歌われれば思い出すような。
そりゃあオレにだってある(今は思い出せねェけDo)。
「忘れないようにしとこーッTo!」
「なして?」
「そりゃ、猪里のお袋が歌ったやつだRo?好きなやつの(母親Ga!)歌ってた歌を覚えておきたいってのHa当然じゃNeー?」
「そんなもん…か…?」
「そんなもんですYo」
あ、ちょっと顔が赤くなってる。
こういうトコロも可愛いんだ、なんて。
「あー…もう…好きな、って…恥ずかしか奴…」
「EーそうですKa?」
「そーなんでスー」
さっきみたいに猪里がオレの口調を真似て返してくる。
目が合って、そんで笑いあって。
(Aァ、幸せ…!)
馬鹿だなんて言われるかもしれない?
そんなコト気にしないね!
オレは猪里が好き、猪里もオレが好き、それで結構!
自惚れてるなんて思っちゃいないさ。
なんでかって?
そりゃあ、ねぇ?
―――絶対絶対教えないけどな!
オレの恋愛講義は高くつくZe?それでも良いなRa教えてやるYo!
040404.
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