※だいぶ前に書いて放置していた代物。
※いろんな意味で病気です。いろんな意味で。
※どいつがハーレムというよりむしろ狼の群に投げ込まれた羊です。(080123)
わたしの名前はフェリシアーノ・ヴァルガス。みんなにはイタリアって呼ばれてます☆
今日はあんまりにも眠くて数学の授業中にうっかり居眠りしてたら……本当に驚いたわ!
気付いたら目の前に広い草原が広がっていたのよ!ここはどこ?なんでこんなところに―――
そんなこと考えてる暇なんて本当はなかったんだけど。だって座り込むわたしの周りに集まってきた
見たこともない大きな動物たちは今にも襲い掛かってきそうだったから。どうしようもしかしてわたし、今大ピンチ?
まだ十七年しか生きてないのよ。こんなところで死にたくないわ!そう思ったけどわたしに状況を打開する術なんてなくて
ただ飛び掛かってきた動物たちの前で目を閉じて身を竦めていたわ。ああわたし、もうすぐ死んじゃうのね―――
そう諦めた瞬間よ。
「―――大丈夫か?」
目の前に、きれいな男のひと。
蒼い瞳に金の髪を持ったそのひとは大きな剣を構えてわたしと動物の間に立っていたの。
マントをたなびかせるその姿にわたしは目が釘づけで―――そうよ、わたしはその瞬間恋に落ちたの!
そのひとはわたしに一言だけ声をかけると魔物のもとへ駆けていったわ。
ああ舞うように剣を振る姿はなんてかっこいいのかしら!
呆けたように座り込んでそのひと見つめていたら突然、ぽんと肩に手を置かれたの。そのときの驚きといったら!
わたしの肩を叩いたその―――ウェーブがかった金の髪に不精髭がちょっとダンディなひとはにこりと笑うと
「あとはおれたちに任せとけ」って言って、最初の彼に混じって凶暴な動物たちを倒していったわ。
そして一人増え二人増えわたしの周りに十人ほど集まった頃、最初の二人が戻って来てわたしの前に
ひざまづいてこう言ったのよ―――お迎えに上がりました姫、ってね!
なんだかよくわからないけどこれってもしかしてネオなロマンスの到来?十人から恋人選び放題?逆ハードリーム?
―――とりあえず姫疑惑は否定したけど同行には二つ返事で了承したわ!
そんなこんなで十人の恋愛対象とパーティーを組むことになったのだけど正直ちょっとげんなりしたわ。なんでかって?
だって仕方ないじゃない―――なんせ恋愛対象がこぞって恋愛対象の中のひとりに恋慕してるっていうんだから!
誰もわたしには振り向いてくれないのよ。そんなこと、あ、有り得ないわ!
そのひとりというのは勿論わたしを最初に助けてくれたあのひとなわけで。
きっとこのパーティも始めは極小だったのよ一人や二人だった筈なのよこんなにも大きくなってしまったのは
絶対にあのひとの魅力の所為なのよ―――!ああこれって前途多難?苦い。苦すぎるロマンスだわ!
―――でも待ってなさいそこの男共。わたしは必ずやあんたたちの目の前で彼を落としてやるんだからね!
そうしてそれを書き終えると、彼はペンを置いて物凄ーく細かい字でそれはもうみっちりと書き込まれた
その冊子を閉じた。すると目の前に座ってマグを傾けていた男が不思議そうに首を傾げながら口を開く。
「何を書いていたんだ、イタリア?」
「……ん、サイトにでも載せようと思って」
「サ……?」
「気にしなくっていいよー。独り言だから」
聞き慣れない単語に先よりも角度を大きくしながら首を傾けた彼に(ああなんてかわいい仕草なんだろう!)
にこりと笑顔を向けると、そうか、と一言落として彼は残り少なかったらしいマグの中身を呷って立ち上がった。
部屋に帰るのだと悟って一緒にイタリアも席を立ちながら、肩越しに一際賑やかなテーブルを指差してやる。
「さてと、明日早いんでしょ? いいのあのままで?」
「気にするな……いつもああだから」
「じゃ、もう部屋に行こっか、ドイツ」
「そうだな」
まったく宿屋の主人に迷惑が掛かる、毎回何の権利を争っているんだ、さあ部屋割りじゃない?、
それに俺を含めないとはどういう了見なんだあいつらは、と会話を交わしながらダイニングを出て二人で階段を上る。
それはドイツとの部屋割りを決めてるからだよ、と策士であるところの彼は賢明に声には出さずそう思った。
一度だけ階下の喧噪を振り返って、彼は密かに笑む。
とりあえず今日はおれの勝ちだ。
フェリシアーノの憂鬱〜愛しの彼は一輪の薔薇〜